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2007/01/14

DAKAR:三菱チーム 休息日ニュース(1/13)

休息日
1月13日(土)
アタール(モーリタニア)

「チーム・レプソル三菱ラリーアート」
総合3位~5位で前半戦を終了
大会期間中唯一の休息日でリフレッシュを図り
後半戦での巻き返しに向けて万全の体制へ

2007年ダカールラリー(正式名称:ユーロミルホー・ダカール2007)は1月13日(土)、16日間にわたる大会期間中で唯一競技が行われない休息日をモーリタニアのアタールで迎えた。
「チーム・レプソル三菱ラリーアート」のドライバーたちは午前中からインタビューなどをこなしながらも、自由な時間は思い思いのスタイルで過ごし、心身ともにリラックスを図った。
一方、前半戦を戦い抜いてきた新型『パジェロエボリューション』には、メカニックたちの手によって徹底的な整備が施された。
アタール郊外の仮設滑走路に設けられたビバーク地には、ヨーロッパから多数のVIPや観戦ツアーを組んでやって来たファンが訪れたほか、三菱自動車の技術開発本部モータースポーツ部・中山修部長をはじめとするエンジニアや9名の増援メカニックが飛来。
クラッチ関係をはじめとする前半戦で発生したトラブルの対策や車両各部の再確認を行い、残る8日間の戦いに向けて万全を期した。

第29回大会を迎えたダカールラリーは、フォルクスワーゲン勢が大会初日の第1レグから総合1~3位を独占。
速さに加えて強さも身に付けたことを証明した形の前半戦となった。
しかしながら、休息日前日の第7レグでついにVW勢の一角が崩れ、代わって通算3勝目を狙うステファン・ペテランセル(フランス)が総合3位に浮上。
総合4位には前回大会の覇者リュック・アルファン(フランス)、そして総合5位には増岡浩が続き、戦前から予想されていた「三菱自動車チーム対VWチーム」の一騎打ちの図式が明確になった。
なお、4輪部門で3度目の出場となったホアン・ナニ・ロマ(スペイン)は、前日に行われたSS7の砂丘で横転。
ダメージを負ったマシンはこの休息日で完全オーバーホールが図られているが、総合成績ではトップから約7時間30分遅れの総合30位に後退。
後半戦はチームメイト3台のクイックアシスタンス役を担いながらラリーを走ることとなる。

ダカールラリー20回目の参戦で通算3勝目を狙う増岡浩は、前半戦の7日間で合計6本のパンクに襲われたほか、第3レグでは猛烈なダストの中で2輪を追い越そうとした際にホイールを岩に強打してパワーステアリングを損傷。
第6レグではクラッチトラブルに見舞われてステージ中での交換作業を強いられるなど、不運が続いた。
しかしながら、トラブルフリーで走れた区間では猛者ぞろいの三菱自動車チームの中でも常に上位のタイムを刻んでおり、ダイナミックバランスを格段に向上させ、高度なハンドリング性能と走破性を実現させた新型『パジェロエボリューション』と自らの走りに自信を深め続けている。

その増岡は、アタールのビバークで次のように語っている。

──走りは好調にもかかわらず、パンクやトラブルが相次いだ前半戦となりました。
フラストレーションをためられているのでは?
増岡「ここまでの展開は悔しいことは悔しいですけど、気持ちは腐っていません。
パンクやトラブルさえなければ、自分が思い描いていたとおりに走れていますし、タイムもついてきている。改めて手応えと自信をつかんでいます」

──それにしても、特に岩に当てたりしたわけでもないというのにパンクが多発したのはなぜなのでしょう?

増岡「新型『パジェロエボリューション』となって、走行ペースはさらに上がっています。
従来のマシンであれば手前でブレーキをかけていたようなギャップも、新型ではノーブレーキングで越えていける。
また、そうしなければならないほどに、現在のダカールラリーの勝負はシビアなものなんです。
もちろん、尖った岩が転がるガレ場などでは細心の注意を払って走っていますが、それでもパンクしてしまう。難しいところです」

──明日からの後半戦はいかに戦われますか?
増岡「現時点でトップから1時間以上離されていますから、無謀なマキシマムアタックをかけて力づくで逆転優勝を狙おうというのは現実的ではありません。
しかし、優勝の可能性を完全にあきらめる必要もありません。
何より、三菱自動車の7年連続・12回目の優勝というチームの目標に向けて、できる限りのことをするつもりです。
そして明日からの3日間こそ、本当の勝負。ミスなく、その上でプッシュし続けていきます。
そして、きっちりと最後まで走り切り、ダカールでのゴールを迎えたいと思います」

チーム最上位である総合3位につけるペテランセルは、第4レグでクラッチトラブルに見舞われ、ここで失った25分がそのまま総合首位との差となって休息日を迎える格好となった。
「ここまで決して順調に走ってこれたわけではありませんが、過ぎたことを悔やんでも仕方ありません。
それに、砂丘での『パジェロエボリューション』は今年も最速だということがすでに立証できています。
そして、その砂丘や柔らかい砂地の路面が、明日、明後日のモーリタニア砂漠のステージで我々を待っているのです。
全力でトップ2台のVWをつかまえにいきます」と、きっぱり言い切るペテランセル。
4輪部門では3回目、2輪時代と合わせると実に通算9回目となるダカールラリー優勝を狙う砂漠の申し子は、ファイティングスピリットを一段と激しく燃やしている。

ディフェンディングチャンピオンのアルファンは、細かな問題によりストップを余儀なくされる日が多く、幾分ナーバスになりながら前半戦を戦ってきた。
それでも初日の総合17位から連日ポジションアップを果たし続け、首位から約34分差の総合4位にまで這い上がってきている。
「この2~3日はパンクやスタックが続いてしまい、その都度タイムを少しずつ失ってきました。
しかし、快調に走れたときのペースはとてもいいですし、最後まで何が起こるかわからないのがダカールラリー。
まだまだ勝機はあると思っています。
これまでの悪い流れを今日ここで断ち切って、明日からの1週間では運を見方につけて走りたいと思います」と、コメント。
前回大会で初優勝も果たしたアルファンは、大会2連覇をしかと見据えて後半戦に臨む。

2004年大会で2輪部門を制覇し、2005年大会から三菱自動車チームで4輪部門に挑んでいるロマは、第5レグまでチーム最上位の総合4位を走った。
第6レグでは総合7位まで順位を下げたが、それはパンクに加え、ステージ途中で転倒していたライバルのゲラン・シシェリ(フランス/BMW X3)の救助にあたるために自ら進んで停車したためだった。
さらに、第7レグでは砂丘へのアタックを行っていた際、足元の砂地が崩れて横転してしまうという不運。
柔らかい砂地がクッションとなって車体へのダメージはわずかだったが、エンジンが砂を吸い込んだために再始動を果たせず、チームのサポートトラックの救援を仰ぐこととなった。
現場での応急措置の結果、エンジンは息を吹き返し、残る112kmのステージと150km以上のリエゾンを耐え抜いて、首位から約7時間後にアタールのビバークへとたどり着いた。
休息日には、三菱自動車技術開発本部モータースポーツ部の幸田逸男エンジニアの手により、シリンダーヘッド交換他の大修理を実施。
総合成績を問う状態ではなくなったため、後半戦では、チームメイト3台の有事の際には身を挺してサポートにあたるクイックアシスタンス役を担いながらの走行となる。

休息日を迎えて人がごった返すビバークで、三菱自動車のモータースポーツ統括会社MMSPの鳥居勲社長は次のように語った。
「まずは、1-2体制で前半戦を乗り切ったVWチームに『おめでとう』と言わせていただきます。
トップ2台は、大きなミスやトラブルを起こしていない。
実に見事な戦いぶりです。我々にとっては、ややツキに恵まれない前半戦だった、という気持ちです。
私がMMSPに来てから3年目のダカールラリーになるのですが、過去2年はともに1-2体制で休息日を迎えていましたので、ちょっといつもの感じと違いますね。

後半戦では、とにかく我々のベストを尽くすのみ。
特に明日からの3日間が本当の天王山です。ステファンはトップを狙ってマキシマムアタックを仕掛けていきます。
リュックは今日で気持ちを入れ替えてくるでしょう。
増岡も好調ですし、こちらが驚くほどに彼の気持ちは前向きですから、追い上げに期待しています。
ナニの転倒は残念でしたが、明日からはクイックアシスタンスとして走りますので、他の3台にとっては実に心強い存在となります。
いずれにせよ、勝負はこれから。
我々の持てる力をあますところなく発揮して、三菱自動車の7年連続・12回目の優勝を目指し、全力でアタックしていきます」

時間が足早に過ぎていった穏やかな休息日。
この日までに戦列を去っていったのは、4輪部門48台(出走180台)、2輪70台(同245台、4輪クワドバギー含む)、カミオン(トラック)18台(同85台)、合計136台(同510台)。約4分の1の競技車両が休息日にたどり着くことができなかった。
そして2007年ダカールラリーは大会9日目となる1月14日(日)、アタールからティシットまでの第8レグ、総走行距離626kmを実施。人車ともにリフレッシュしたばかりのエントラントを待っているのは、今大会最長589kmのSS8。より内陸を目指し、南東へと進んでいくこのステージは、その前半にハードなグラベル区間、そして中盤にはモーリタニア砂漠の大砂丘群が控える大会屈指の難コースである。
しかも、ティシットのビバークではメカニックによるサービスは行われないため、ロングステージを乗り切ってきたクルーたちは自らの手と車載工具で最小限の車両整備を行い、明くる15日(月)の第9レグに挑む。
前半戦を乗り切った競技車両をさらに振るい落としにかけるこのマラソンステージが、三菱自動車チームにとって最大の勝負所となることは間違いない。

■受難の第7レグを経て、三菱車プライベーターも後半戦へ
前半戦を好調に戦ってきた三菱車プライベーターだが、休息日を目前にした第7レグ、542kmのSS7で上位陣が続々とアクシデントに見舞われることとなった。
しかも、「チーム三菱ラリーアート・チャイナ」のリュー・ビン(中国/パジェロ)、「チーム三菱ラリーアート・タイランド」のマナ・ポーンシリチャン(タイ/レーシングトライトンエボリューション)、第6レグを終えて三菱車プライベーター最上位の総合24位を走っていたレオニド・ノビトスキー(ロシア/レーシングトライトンエボリューション)、さらにクレバー・コルバーグ(ブラジル/パジェロ)という、スペインの「ティボー・チーム」の運営により出場している4台がそろって砂の中に隠れていた岩で下回りを打ち、いずれもリヤディファレンシャルを破損させて立ち往生する事態に。
チームのサポートトラックのアシストを受けて、どの車両も深夜にはアタールのビバークへたどり着いた。
アクシデントの翌日が、大掛かりな車両整備を行える休息日だったのは幸いで、ノビトスキーは総合32位、ビンは総合69位、ポーンシリチャンは総合86位、コルバーグは総合90位と、それぞれ順位を大きく落としながらも、後半戦には無事出走できる見込みである。
なお、前半戦を終えての三菱車プライベーター最上位には、総合22位のドミニク・ウズィオ(フランス/パジェロ)が立っている。

■『パジェロ』で出場の池町佳生も第7レグで大きく後退
「ティボー・チーム/ラリーアート」から、『パジェロ』で挑んでいる池町佳生選手だが、SS7でリヤディファレンシャルトラブルを抱え込み、身動きが取れなくなった。
池町選手とコ・ドライバーの杉村卓哉選手は漆黒の砂漠で待機。
サポートトラックが現場に到着したのは13日(土)午前3時頃で、夜明けを待ってトラックでの牽引により砂丘を脱出。
路面が硬いダート路となったステージ後半からは2輪駆動ながらも自力で走行し、トップドライバーがゴールしてから約22時間後の13日(土)正午前にようやくアタールのビバークへ到着した。
「ご心配をおかけしましたが、チームが素晴らしい仕事ぶりを発揮してくれ、明日からの後半戦にも無事スタートできます。
『完走』が目標となってしまったのは残念ですが、それよりもラリーを続けることができる喜びでいっぱいです」と、疲れ知らずの明るい笑顔を見せていた。

この他の日本人プライベーターでは、三橋淳選手(トヨタ・ランドクルーザー)が市販車無改造カテゴリーの首位となる総合21位を走る活躍を見せているほか、チームメイトの山田周生選手(トヨタ・ランドクルーザー)も総合37位と健闘。
日本人初のダカールラリーウィナーである篠塚建次郎選手(日産パスファインダー)は総合71位、F1ドライバーから冒険家へ転じた片山右京選手(トヨタ・ランドクルーザー)は総合78位と、それぞれ前半戦を戦い抜いている。

■田口勝彦、『デリカD:5』で走った2007年ダカールラリー前半戦を振り返る
「チーム・レプソル三菱ラリーアート」がサポートカーとして投入した、今春発売予定の新型『デリカD:5』も無事アタールのビバークに入った。
同車のドライバーを務める田口勝彦(ラリーアート)は、ここまでの旅を次のように振り返る。
「新型『デリカD:5』が、ワンボックスタイプのミニバンらしからぬ高い走行性能を備えていることは理解していたつもりです。
でも、実際にアフリカで走らせてみると、予想をはるかに越える、スゴいクルマなんだということを実感できました。
『これぞアフリカンラフロード』というかんじの荒れたダート路も、僕らの『デリカD:5』は80~110km/hくらいのペースでこなしてきました。
それに、これだけ走らせてきたのに、まったく疲れない。
後部座席にはMMSPの鳥居社長がずっと乗っているんですが、『後ろに乗っていてもすごく快適』ということです。
もちろん、トラブルも一切ありません。
後半戦でサポートカーが走るルートは、もっぱら舗装路が多いようですが、まだまだ先は長い。
我らが三菱自動車チームが7年連続・12回目の優勝を果たすところをぜひこの目に焼き付けたいので、ダカールまで僕も気を抜かずに頑張ります」

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